胃から汗をかく -その2-

アクティビティ

伊豆大島シリーズ第二編です。
前編はその1の記事をご覧いただけると幸いです。

夜明け

 朝焼けの到来を感じる空模様の下、初来島の私は集団を追いかけるように防波堤の通路を歩きます。通路を抜けた先には島内の各スポットを行先表示板に表示させたバスが何台も並んでいました。下船客はめいめいにそれぞれの目的地へ向かって別れていきます。

 こうして一通りのスポットと距離感を覚えた今だからこそ、冷静に「(google mapで)ここだよね」と語っていますが、当時は離島の暗がりで一人取り残されることを恐れていました。そんな私は慌てて「元町港行」と表示されたバスに乗り込むのでした。

 伊豆大島内の路線バスは大島バスさんが運営されており、この早朝到着の船に合わせた臨時便が出ているようです。実際の始発時刻は7~8時となっており、この臨時便を逃してしまうと痛い目にあいそうです。来島の際にはご注意ください。

大島早朝便の入港に合わせ、元町港・御神火温泉・波浮港・大島公園・大島温泉ホテル等、各方面への接続バスがあります(大島バスHPより)

伊豆諸島

 伊豆諸島は火山活動により生まれた島です。特にこの伊豆大島と三宅島は近年も噴火があった活火山の島。その海岸線は黒っぽくごつごつとした溶岩が特徴的です。同じ伊豆諸島でも、利島と御蔵島はその溶岩の海岸線が長年の海風による浸食により切り立った断崖になっており、島の形はきれいな円錐状をしています。

 一方伊豆諸島で白い砂浜といえば新島、式根島、神津島。この色というのは噴出するマグマに含まれる二酸化ケイ素の含有量によって粘性とともに決まります。玄武岩とか流紋岩とか、小学校か中学校の理科で習いましたよね?私も門外漢なので溶岩のお話はここまで。

神津島の前浜海岸からの一枚。白い砂浜が見られます。

 伊豆大島は島全体が日本のジオパークとして登録されています。東京中心部からさほど遠くない伊豆諸島という場所ですが、地球の鼓動を肌で感じ、大地や生命の成立ちを考えるきっかけをくれる有意義な観光地です。行ったことがない人はぜひ来島してみてほしいですね。

 少し話がそれてしまいました。何が言いたかったかというと、伊豆諸島の島々では生活面の海抜が高い地域が多く、島は急峻な地形をしています。あるいは傾斜地に暮らしているケースも珍しくありません。それゆえに大島バスは海面近い岡田港から急峻な坂道を登って、島で最も主要な道路「大島一周道路」に入っていきます。

大島一周道路を走っているバスから見る景色は「伊豆大島に来たのだ」という実感とワクワク感を与えてくれました。

元町港にて

 バスは暗がりの中を進み、元町港へ到着しました。
到着する頃には明るくなったものの、ぶあつい雲と生暖かい空気に包まれ暑くなりそうな気配です。

元町港から南を望むと利島と新島の影が見えます。

 先人のブログなどを見て多少の予習はしてきたのですが、「朝5時から自転車を借りられるなんて本当か?」と疑心暗鬼でした。最悪波打ち際でぼーっとすることも考えていましたが、4時台でも本当に開いていたレンタサイクルみよしさん。みよしさんはお土産屋さんとカフェもやっていらっしゃいます。本当にこの島の商魂たくましい(ほめ言葉)サービス業の方々は早朝の来島者に合わせた営業をされていらっしゃるのだなと感心させられっぱなしでした。

 店主の方でしょうか。気前のよいおじさまに自転車を借りたい旨と荷物を預かってほしい旨を伝えるとサクサクと手続きが進みます。「大丈夫?体力ある?」と多少の心配をしながらも、島の見どころや一周する際の注意点など、地図や写真を用いて怒涛の勢いで教えてくれました。写真は私が説明を受けながら備忘録として撮影したもの。

 車だと一周するだけなら1~2時間、自転車だと慣れた早い人なら昼くらいには帰ってこられるようなことを仰られていました。しかし7月の炎天下、運動不足の私です。見るからにアップダウンが激しく、電波も通じない(らしい)島の裏側区間に戦々恐々として、生きて帰ってくることだけを考えていました。

真剣に聞いた分だけ地図に書き込みながら丁寧に解説してくれます。
特に泉津の切通はわかりにくいようです。
使い古された感のある見どころ特集。手作り感がいいですね。

実際の島一周サイクリングの行程もマップに起こしてみました。

 自転車を借りる際には電動自転車とマウンテンバイクのどちらにするかを聞かれます。アップダウンの激しい道で電動自転車のバッテリー切れを憂慮した私はあえてマウンテンバイクを選択しました(みよしさんの公式HPを見たところ、今は電動自転車のみの貸し出しになっているそうです)。これ、個人的には正解だったと思っています。

ルートは大体覚えられたかな?
頭に叩き込んでさあ出発です!

出発前に元町港での1枚

朝日とともに

 今回紹介するルートは伊豆大島の北半分ほど。
元町港を出発しサンセットパームラインを北上、空港脇を抜けて大島一周道路へ、都立大島公園までです。大きな見どころはやはり泉津の切通でしょうか。

 朝日と共に出発した私、サンセットパームラインをライジングサンに向かって走ります。正面から朝日を浴びてとてもまぶしかったのを覚えています。いよいよ始まった自転車での大島一周。胃から汗をかく旅。穏やかな潮風を浴びながら感慨にふけります。

サンセットパームラインを走りだしてすぐのスポット。長閑です。

 しかし普段自転車に乗らない私、大島空港の滑走路をくぐり、チェックポイントのひとつであるぶらっとハウスに着くころには早速太腿がつらくなります。慣れないマウンテンバイクの変速機能も試行錯誤して、負荷とスピードのちょうどよい塩梅を探します。

 ぶらっとハウスは道の駅のような商店だと思いますが、もちろんこんな時間には営業していません。ほぼ気づかずにスルーしました。そして進行方向右手には大島空港の滑走路が。もちろんこの時間に島に飛行機が来ることもないでしょうが、島の空港というだけでワクワク感がマシマシです。

 大島空港のターミナルを傍目に内陸部へ進むと、さきほどバスで通った大島一周道路に出ます。今度は岡田港方面に逆走していきます。緩やかな登り坂なので、少しばかりの負荷調整でそこまでの苦も無く登ることができました。

 岡田港に降りられる道を通り過ぎると、大小3つのトンネル区間に入ります。川の道トンネル、七間沢トンネルを抜けると橋になっており、左手にはきれいに海が見えます。この橋は岡田橋というそうで、遮るものがないため眺望はすばらしいですが、それなりの高さもあって怖さも感じます。さらに秋の浜トンネルもぬけて泉津の切通へ向かいます。

 この区間の特徴については、みよしさんで教えてもらった事前情報がばっちりと役に立ちました。いかんせん下りでそれなりのスピードが出ていたので撮影など忘却の彼方です。

 さあ見過ごすこともなく無事に泉津の切通にたどり着きました。暗いと見逃しそうです。

泉津の切通(横向き)

横の写真だと迫力皆無…
ということで縦の写真です。

泉津の切通(縦向き)

 大木の根が抉られた左右の岩を巡り道路側まで張り出す迫力です。
切通というと私は鎌倉を思い出します。鎌倉に幕府があった頃、南を海に、三方を山に囲まれた天然の要害である鎌倉において人馬の行き交う道を確保するために丘や岩を削って作られたものです。

 しかしこの切通はなんのために作られたのでしょうか。神秘的な雰囲気はありますが、少し奥まで入っても道だったのかもわからぬ荒れ模様です。その昔は山側との往来があったのでしょうか。

 泉津の切通を後にした私、野鳥の声を聴きながら大島公園に向けてだらだらとした坂道を登ります。この辺りはまだ普通に漕いで登れますが、着実に伊豆大島の洗礼が近づいている気がします。

 まだ朝早いので日も高くありません。左右は木々が生い茂りつつ、木影に隠れて進めることを喜びつつ、いつまでこれがもつだろうと戦々恐々でした。

 大島公園についたので休憩です。記憶が怪しいですが、ここで7時くらいだったでしょうか。
初めての伊豆大島、早朝からいろいろあって既に一仕事を終えた感がありますが、まさに本番はここからです。自動販売機もあり、ここが本番前の最後の休息地点といったところでしょう。

大島公園の椿資料館前にて休憩です。
徐々に気温が上がるのを感じます。
乗船前に買ったおにぎりなどを食べながら補給に努めます。

次回に続きます。
今回も読んでくれてありがとうございました。

よーく

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