伊豆大島の裏側
裏があれば表もあります。
どこが表かと言われると、本土(都内)から見た対面である岡田港側か、あるいは伊豆大島で最も栄えている元町港側になるでしょう。
一方裏側。
この大島公園から波浮港までは、海から三原山へと続くずーっと急峻な地形です。民家はありませんし、通りがかるのは同業者か観光の乗用車がほとんどです。
島のほとんどの方々は、波浮港までを含めた島の西半分で生活が完結するのでしょうね。
自転車を借りる際に、この辺りは人が住んでおらず電波も圏外になるからと注意されました。三原山の陰になってしまうため場所によっては基地局まで電波が届かないのでしょう。
しかし流石は東京都、道路はしっかり整備されています。
思ったより時間がありそうなので、当初寄る予定はなかった裏砂漠にも向かいました。
この自転車で大島一周旅、体力が尽きてなお走り続けましたが、裏砂漠(月と砂漠ライン)にさえ寄らなければもっと楽に一周できたと思います。

大島公園を出て南方へ向かいます。
ぜひ地図を見てみてください。大島公園を出た瞬間に山登り特有の折り返しZ字です。想像はしていましたがとんでもない坂道です。
普段からロードバイクに乗られる方ならともかく、私は自転車にすら乗りません。当時は変速機能のあるマウンテンバイクとはいえ、電動ではありません。ここから一気に約300メートルを登らねばなりません。ということで、無理せず押していくことにしました。

いつまで続くかもわからない登り坂ですが、幸いにも木陰なのでつらくなれば止まって休めばいいのです。
しばらく登っていると、時折海側が開けて絶景の香りがします。
標高とともに登ってきたことを感じます。

蝉の声が大きくなり、今日も暑くなる気配を感じます。影の長いうちに登りを終えてしまわねばなりません。
こうなると未明~早朝に出発できたのはありがたいことでした。
裏砂漠の入り口に着きました!
ここから裏砂漠にも入っていけそうですが、車両は進入禁止の記載があるので別のルートを探ります。この先にある「月と砂漠ライン」というのが気になります。



閑話休題 夏旅のお供
時期は7月末です。過去天気を調べてみましたが、当然真夏日でした(最高気温30℃以上)。日射等を考慮すると局所的にはもっと高かったかもしれません。
体調管理しないとあっという間に熱中症で動けなくなってしまいます。ということでここらで閑話休題。
実際にここでしっかり休憩を挟みましたのでね。
需要があるかはおいておき、私の夏旅アクティビティの相棒たちを紹介します。
・冷感スプレー
ミストになってる小さいスプレータイプです。
アルコールの揮発熱として付着物から熱を吸収する際に冷たく感じるのでしょう。
本来肌に直接というものではないのですが、今すぐ冷感がほしいので気にせず顔や首筋などに吹きかけます。意外と肘の内側や膝の裏側は気持ちいいです。皮膚が薄く血管が集中している、曲げる際の内側なので熱がたまりやすい、といった理由でしょうかね。
・タオル
普通のタオルです。厚すぎず薄すぎず、私はガシッと汗を「拭える」サイズ感のものが好みです。
・水分
私は汗っかきで心配症なので、こういう時はいつもかなり多めに持っていきます。この時は1.5Lくらいだったでしょうか。
途中で自販機などがあれば不足分を適宜補給します。
昔夏コミに行った際は一日分として凍らせたりしながら3Lくらい持っていきました(笑)
水分の種類も偏らないよう注意します。水だけでなくミネラル、糖分などバランス良く。
・冷感シート
摂取する水分が多いからかとにかく汗をかきます。
いきなりこのシートを使うと多量の汗のせいで効果が半減するため、まずはタオルで汗を拭ってから冷感シートでゴシゴシしてリフレッシュします。
スプレーよりも腰を据える必要がありますが、リフレッシュ感は強いですね。
・帽子
軽さとフィット感が好みでユニクロのUVカットキャップを使っていました。透湿性と速乾性の観点から薄くて軽いものがいいような気がします。
・サングラス
幼い頃より、日射による目の疲れから頭痛になることが頻繁にあったので、私は必ず着用します。
隙間からも入らないようなるべく覆う範囲が大きいもの、遮光性の高いものが好みです。当時はelleseのスポーツサングラスをしていました。
・無印のサコッシュ
リュックを頻繁に背負い直すのは億劫なので、小物を中心によく使うものはここに入れます。目薬や携帯、充電器などですね。
ズボンのポケットはムレがいやなので使わない派です。
・塩飴
汗っかきからすると必携でしょう。
そもそも汗をかくのは体温調節のためです。汗には多少のミネラルが含まれるため、汗をかけばかくほど体内の塩分濃度は下がります。ミネラルは細胞の浸透圧調整の鍵です。
要はミネラルが不足すると体の水分調整がうまくできなくなり汗がかけない、つまり体温調節ができなくなり熱中症につながります。しっかり汗をかき続けるためにも塩分は意欲的に補給します。
・骨伝導イヤホン
私は一人だと音楽を聞いている時間が多いです。耳をふさがずに音楽を聞けるので重宝しています。
来年から自転車関連の規制が厳格化しますが、果たして骨伝導はどういう扱いになるのでしょうね。
閑話休題おわり。
月と砂漠ラインとわたし
休憩をすませて再出発です。
裏砂漠入り口辺りまで来ると大島一周道路としての登り坂はだいぶ一段落ついた気がします。あくまで大島一周道路としてです。
そこまでかからずに「月と砂漠ライン」の入口に着きました。
地図でみると道路が伸びていますし、駐車場の記載もあるので自転車はいけますね。ここを行けば裏砂漠にアクセスしやすいのでしょうか。
…なんて思っていました。

道幅は大型の乗用車一台分くらい、行けども行けども今までとは比較にならない斜度の上り坂がノンストップで続きます。
数台の乗用車は通り掛りましたがただそれだけ。
太陽高度が高くなって日陰が減ります。多少蛇行しようともとにかく木陰を縫って歩きます。しかし自転車を押して歩くだけで足がつってしまいます。
息を切らし足をつりながらも無心で進みます。
大した下調べもせず、自転車でこの道を進んだことをひたすら後悔していました。

看板が出てきた!と思ったらここからがまた長いこと。
ちなみにここからは道幅が一層狭くなります。
潮風か老朽化か、錆びたガードレールと狭い道、海の気配。
私の大好きな雰囲気の道です。
とはいえ足がつりっぱなしのため楽しむ余裕はほとんどありません。

なんとか耐え続けていると駐車場と思しき多少の開けた場所に出ました。砂漠の入口にようやく到着です。

日本唯一の砂漠
日本唯一の砂漠はわずかばかりの森を抜けた先にありました。
三原山のカルデラ北東部に広がるこの「裏砂漠」は国土地理院の地形図で唯一「砂漠」と表記される場所。黒っぽいのはスコリアという暗色の火山噴出物です。


太平洋に浮かぶ伊豆大島で一際高い場所。周囲に遮るものはほとんどないため、風向きによってはびゅうびゅうと強い風が止まないことも珍しくありません。
しかしこの日は幸運にもほとんど風はありませんでした。
また自分以外に人がいないためほぼ無音です。


一人で無人島に流れ着いたらこんな気持ちでしょうか。
エンジンや電気に頼らずここまでたどり着いた達成感
圧倒的な自然、地球の原風景に感動する心
世界に自分以外誰もいないかのような寂寥感
経験不足の身で恐縮ですが、私が今まで訪れた中で最もこの世の果てに近い世界です。


遮るものがないということは直射日光を全身で浴びます。
また不安定なスコリアの上を歩く私の足は既に限界で、普通に歩くだけで両足の太ももが攣ってしまいます。立ち止まっては痛みから涙が出てきます。
いまさらですが、筋肉の痙攣は完全に熱中症の症状ですね。
後ろ髪を引かれる思いで駐車場に帰ってきました。
再出発に向けて休憩します。
ここからはしばらく下り坂なので気が楽です。

波浮港到着
ここから波浮港に向けて急坂を一気に降ります。
体が限界近いとはいえ、道程の3分の1~半分くらいは下り坂です。

私は伊豆大島を元町港から時計回りにまわるルートを選びました。一方伊豆大島を反時計に回るルートもあるようです。
時計回りのほうが前半に登りがくるため初心者向きだよと教えてもらいました。反時計回りは上級者向けのようで、実際に反対方向にすれ違ったのは1~2名でした。
次やるとしても私は時計回りを選ぶと思います。
理由は単純に風景です。
反時計回りだと最後にサンセットパームラインを楽しめるのがメリットでしょうか。これもいいですね。
一方時計回りの場合、筆島に向かって降りていく大きな下り坂、また波浮港に向かう長い直線道路から壮大な海と伊豆諸島の島々を見ることができます。
もちろん天気が抜群に良かったのは幸運でしたが、島々の祝福というべきか、これまでの労をねぎらってくれているかのような素晴らしい風景でした。
下り坂を終えると筆島です。一気に降ってきたのがよくわかります。
海上にチョコンと突き出た岩のようなものが筆島ですが、大昔はこの筆島そのものが火山だったようです。現伊豆大島が隣に新しく噴火で誕生し、一方で筆島火山は波風に浸食されてここまで小さくなったとのことでした。




筆島を出て直線道路を抜けると、民家が見えるようになります。
町の空気が出てきました。波浮港はすぐそこです。
波浮港展望台の正面には「みはらし休息所」という売店がありました。木陰にベンチもあるので休憩していきます。
売店の中には大島牛乳アイスが売っていました。
これ食べたかったんです。お味は濃厚な牛乳だけど、いらないものが入ってないので後味さっぱりです。甘みも最低限でよき。
フタを開けた勢いで手が滑り、アイスから地面に着地して砂だらけになったりもしますが気にしない。
また久しぶりの自販機です。嬉しいことにゴミ捨て場もあるので、飲料の整備もさせてもらいました。

今回はここまで、次回に続きます。
読んでくれてありがとうございました。
よーく
コメント