文学の聖地 波浮港
休憩ベンチの裏側には波浮港見晴台。
波浮港を鳥瞰することができます。
今からこの町へ入っていきます。
どこかでお昼ご飯食べたいなあ(何も決めていない)。


この辺りの民家の多くは小高くなっている地形に立っているのですが、港へ行くには海面付近まで急坂を降りる必要があります。
波浮港へ南側から降っていくと右手に見える波浮比咩命(はぶひめのみこと)神社に寄りつつ、港内を都道210号に沿ってぐるりとまわります。
この波浮港、かつては噴火口だったようです。噴火口に水が溜まってできた火口湖(マール)が1703年の元禄地震による大津波で海とつながって、人口的に広げて漁港として活用されるようになったそうです。
なるほど、だから波浮港は港部分のみが窪んだ地形をしているのですね。
奥まった湾形状の波浮港ですが、湾を出ればすぐに太平洋です。押し寄せる津波も相当のものだったでしょう。
房総半島南端付近が震源と推測される元禄地震では北は釜石、西は高知まで津波の被害が出たと記録されているようです。

ちょうど夏休みの時期というのもあったでしょうか。港内の海で遊ぶ子供たちの様子も見られました。
私は自転車を置き、歩いて岩場を進んでみます。
湾内は澄んだ穏やかな水面、一方で外洋に面した外はなんだか水のかさが増えたような迫力を感じます。それでも海は澄んでおりきれいです。

10時半~11時頃だったでしょうか。朝早くから活動しているためお腹が減りました。そろそろお昼ご飯が食べたいですが、まだ島の食事処は開店していません。
アドレナリンが出て動けているものの、軽い熱中症の症状が出ているため、近くに小休憩できる場所はないかと探していると、踊り子の里資料館なるものがあるので行ってみます。
階段を少し登ればそこは踊り子の里資料館。もともと港屋という旅館だった建物が資料館になっているため、旧港屋旅館とも併記されています。看板にも「みなとや」と書かれています。
私の身体は疲れのピークだったのでしょう。
割と鮮明に覚えているのですが、残念ながら写真は残っていませんでした。
地味に嬉しいのが、この資料館は無料開放されています。
受付などもありません。
歩けばギシギシと音が鳴り、急な階段に低い天井、古びた木と畳の匂い、いかにも年代ものの建物です。
川端康成の小説「伊豆の踊子」、映画「波浮の港」は有名ですが、それこそ昔は周辺の宿も満室になり、芸者がそこらを行き来するような栄えぶりだったようです。
これらの作品の舞台となっています。
内部はそれら作品についての展示パネルもありましたが、当時の繁栄を再現するかのような蝋人形が印象的です。スイッチを押すと動き出すギミックもあります。だいぶ色褪せており、不気味さを感じることでしょう。
私はというと、誰もいないのをいいことに風が通る2階の廊下から芸者の蝋人形をしばらく鑑賞(休憩)していました。
窓は海側に面しており、風が抜けるたびにガタガタと窓枠が揺れます。
火照った身体を休めながら、当時の旅館内の雰囲気に思いを馳せつつ…お昼ご飯のタイミングも見計らいます。
旧港屋旅館を出て文学の散歩道と呼ばれる階段を登っていきます。
おそらく噴火口の内外をつなぐため急坂になっているのでしょう。
私は文学に明るくないので幸田露伴くらいしかわかりませんが、いくつもの歌碑があります。
お昼ご飯は当初お寿司にしようかと思っていたのですが、熱中症対策にエネルギーと塩分が必要と感じてラーメンにしました。「らぁ麺 よりみち」さんです。
人気店のようで、既に待ちができていました。
軒先で名前を書いて待つタイプです。15分くらいで入れたでしょうか。
私がオーダーしたのは島海苔ラーメン 貝塩味。
島らしさ全開の島海苔たっぷりラーメンです。
あっさりすぎない貝出汁の効いた貝塩スープ、スープを吸って香ばしさが増す島海苔、思ったよりも海が香るパンチある一品でした。
次行く機会があれば辛ゴジ怪獣ラーメンが気になったので食べてみたいですね。
らぁ麺 よりみちさん
https://ramen-yorimichi.com

事も無げに完飲してお会計を済ませるとスタッフのお姉様が私に話しかけます。
「お兄さん、島の人…?」
「いえ、違いますよ(笑)」
「ごめんごめん、雰囲気があまりにも島の人ぽかったから(笑)」
地元民から間違われるとはどういう意味でしょうね…
火照った体に熱いラーメンを入れたせいか、もう少し涼を求めたくなります。
波浮港に戻る道沿いに「東京梵天」さんのカフェがあったので、アイスコーヒーと明日葉たい焼きをいただきました。明日葉(あしたば)は伊豆諸島でおなじみ生命力の強い植物です。てんぷらやおひたしで食べられます。お香の香りでリラックスしつつ、もちもち食感のたい焼きを楽しみます。

東京梵天さま(宿泊もされているそうです)
なんだかんだ波浮港で2時間弱滞在していました。
だいぶ身体の火照りも引きました。
いざ再出発です。
火山が作り出す絶景
波浮港を出発し、元町港まで一気に帰ります。

この伊豆大島で最も有名な海水浴場が波浮港の近くにあります。「トウシキ遊泳場」です。
都道210号で登っていく途中で左折すればよかったのですが、どこかに寄れるほどの余裕はなかったのでしょう。また入り口がわかりにくいというクチコミもありますね。
私は完全に失念していました。
伊豆大島の南側に位置する差木地の中心部を通ります。
多少のでこぼこはあれど自転車でもさほど問題ない道路です。
この地理的要因もあって生活の匂いがするのでしょう。
自転車ですいすいと進めます。
差木地を過ぎて野増に入ったあたり、地層大切断面(バウムクーヘン)がそろそろといった頃合い。
海側には絶景が広がります。
右から、利島、式根島(奥側)、新島。おそらく神津島は見えていないと思います。さらに左に視線を移すとぼんやりと三宅島も見えているでしょうか。
お天気に恵まれました。
「あと少し」と応援されている気になります。

さて、山側を見れば島まるごとジオパークの伊豆大島の有名観光スポット、通称バウムクーヘンこと地層大切断面です。
伊豆大島一周道路を整備する際に現れたものだそうです。

過去の噴火で降り積もった火山堆積物が何重にも重なった美しい縞模様で、その形容からこう呼ばれています。まあ解説なくとも一目瞭然でしょう。
実際に見た感想としては、まずこの断面の規模に圧倒されます。
また火山堆積物の層の波打ち加減も不思議なもので、これがよりバウムクーヘン「らしさ」を増していました。

写真を見ての通り、眺望と日当りは表裏一体です。
小さな木陰や草陰など、休めそうなところでこまめに休憩をとります。
バウムクーヘンを過ぎた後は地味に長くて辛い上り坂が続きます。
慣れてきていちいち降りるほどではないとはいえきついです。
上り坂を変速機能を駆使して少しずつクリアしていきます。
上り坂を走るコツは上を見ない、足下からちょっと前だけを見て無心でこぎ続ける。
どこかのマラソンランナーさんが言っていました。
ながーい登り坂を抜けると野増の町中。
ここを抜けるとゴールはすぐです。
14時頃には元町港に戻ってこられました。
休憩や寄り道も挟んで9〜10時間程度。
自転車でまっすぐ一周するだけなら6〜7時間くらいでいけるのでしょう。

返却の前に汗だくの身体をきれいにしようと元町港から少し北に行ったところにある浜の湯さんへ。
こちら建屋内はまるで海辺のシャワー小屋のようで、更衣スペースの隣に3~4の区切られたシャワースペース(カーテン付き)があるだけです。
露天風呂ですが、屋外にある男女混浴の湯船のみ。
洗い場は前述のシャワースペースです。
ちなみに浜の湯さんは「水着着用が必須」です。
私はなぜか水着を持っていたので何事もなくお風呂へ入りました。
肝心のお風呂は波の音が聞こえる海沿いの露天風呂。
北西向きに位置しているこのお風呂からはお天気次第で伊豆半島と富士山がきれいに見えます。
景色が自慢のお風呂の中では、私はこの浜の湯さんが日本で一番と言ってもいいと思っています。
まさに絶景です。
1時間位粘ってお風呂と絶景を堪能した後は、再び元町港へ。
みよしやさんへ自転車を返却し、中のカフェスペースでアイスコーヒーをいただきました。

元町港の看板に伊豆大島一周のわかりやすい情報がありました。
伊豆大島を一周しようと考えている方の参考になれば幸いです。
「伊豆大島一周」日常に疲れて思い切り汗をかきたい人に超おすすめです!
(夏でなくてもよいと思いますが…)

伊豆大島一周旅のまとめ
個人的一押しスポット
・浜の湯
・裏砂漠
・波浮港
・地層大切断面
まとめ
・本土にいるとなかなか味わえない島の空気と大自然が作り出す景色に圧倒される。
・東京から比較的アクセスがよいにも関わらず、これでもかという非日常感を楽しめる。
・せっかく伊豆大島行くなら一周しよう!
宿題
・三原山トレッキングと三原山温泉入浴
・トウシキ海岸などでマリンアクティビティ
読んでくれてありがとうございました。
次回は少しだけ後日譚を語ろうと思います。
よーく
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