前編中編を読んでくれた方、ありがとうございました。いよいよ後編です!
今回の行程はゴールの芦原温泉に向けて、山を抜けて一路海へ。東尋坊を目指して福井平野を横断していきます。

ゴールに向けてというと聞こえはいいですが、めちゃくちゃつらいです。山から吹きつける冷たい強風、疲労で痛む身体、上がらないペース、落ちていく心拍数と反比例して増幅される眠気。明るくなってからは家族と連絡がとれたりしてメンタルも回復していきますが、この暗くて寒くて孤独な時間をぐっと耐える精神力がウルトラウォーキングでは最も重要だと私は考えています。
第四エイド~第五エイド(ファミリマート御油⽥店、91km地点)
この区間は14kmで所要時間は3時間弱、時速5.2kmでラップタイムは1kmあたり11分30秒くらいでした。回復の実感を得られないまま第四エイドを出ましたが、私の不安は的中しました。体は固く、特に足裏が痛い。体重がのせられない状態です。とりあえず前に進む私ですが、もっと時間をとって徹底的に身体をほぐすべきだったのか、それとも前区間以前の疲労が尾を引いて単純に限界なのかと自問自答。てなわけでこの区間は全然写真をとれませんでした。エイドの写真もありません。
九頭竜川にかかる鳴鹿橋を渡りしばらく行ったところ、看板にこれからの行き先がすべて登場しました。これを見るといよいよと思いますね。まずは北陸自動車道、その先の丸岡城を目指します。

時間は午前3時頃でしょうか。県道17号線、勝山丸岡線をひたすら直進、北西へ進みます。田舎特有のながーい直線道路、障害物もないため背後の山から私の背中に直接吹きつける冷たく強い風は海陸風ですね。とにかく寒くておなかの減りが早く、エイドでもらったお菓子はすぐに食べつくしました。耳が冷たかったものの途中でウインドブレーカのフードをかぶることをひらめきます。フードは偉大。
また足が痛みに慣れて歩けるようになるまで、一時的にトレッキング用のポールを使うことを決めます。ここまで自身の足のみで来たものの、背に腹は代えられません。結局一時間半くらい使ったでしょうか。北陸自動車道の高架を過ぎたあたりから周囲に住宅が増えます。丸岡の市街地に入ったことを感じますが、痛みをこらえきれず何度か立ち止まりストレッチをしました。心拍数が上がらず眠気も私を襲います。メンタルの限界その1です。
丸岡城北の広場でも休憩などしつつ8号線まで来ました。看板に小松と加賀が出てきて石川県の雰囲気も感じつつ、結構北上してきたことがわかります。この先看板表示の県道9号線へ入り三国方面へ、第五エイドはまもなくです。

その先で二人組の参加者に追いついたので交流しつつ一緒に進みます。今大会の感想や他のウルトラウォーキング大会についていろいろお話しさせていただきました。話をしていると眠気は飛びますね。
第五エイドはファミリーマート脇。屋外で周囲が開けているため冷たい風が吹き抜けます。エイド食はおそらくコンビニで準備していただいた肉まんとインスタントスープ。個人的には量が少し足りなかったので、コンビニでホットコーヒーとおにぎりも自己補給しました。ここではトイレもお借りできますが、私はコンビニのトイレで荷物を広げるのは少々抵抗があったので入らず、屋外で休憩とストレッチのみにとどめました。屋内エイドのありがたみをひしひしと感じるのでした。
第五エイド~第六エイド(ローソン三国⼭王店、103km地点)
12kmの短いこの区間、所要時間は2時間20分程度。時速は約5.2kmでラップタイムは11分30秒くらい。福井平野の田園風景のど真ん中でひとりぼっちを堪能できるコースです。この区間は第五エイドを出てすぐに高架化している北陸新幹線、ハピラインふくい線、えちぜん鉄道三国芦原線の線路を横切るコースでもあります。写真は県道154号線のハピラインの踏切内で北向きにパシャリ。

第五エイドを出たときはまだ暗かったですが、痛む足をひきずってヨチヨチと歩いているうちに空が白んできました。このあたりが全体を通しても足の痛みのピークで、エイドでしっかりほぐしたつもりが、寒い中休んだことによって身体が全然動きません。ここまで来るとへたに動きを止めないというのも大切なのかもしれませんね。第五エイドのコンビニで購入したホットコーヒーもすぐ冷めてしまいました。1kmあたり13分くらいで文字通り「ヨチヨチ」と必死に歩き続けます。
そんな体調に対して、進む先が見えすぎるこの田園コースはいやらしく絶望感を与えてきます。また進むペースが露骨に落ちることで後続との差も気になるようになります。朝4~5時くらいですかね、メンタルの限界その2でした。

ゆっくりでも前に進めばゴールが近づく、そのうち身体が慣れて楽になってくるんじゃないか。家族の言葉を思い出したり、ケガでまともに歩けなかった最近の約四か月を思えばその頃よりつらくない。むしろその経験を経て今いるこの環境・体験が幸せだ。楽しもう。
そう自身に言い聞かせながら、えもしれない感情から時折涙をこぼしたりしながら、広大な田園風景のど真ん中、ひたすら一歩ずつ踏み出し続けました。
明るくなるにつれて身体が温まり、痛みにも慣れてきました。家族が起床する頃に連絡がとれて気分も明るくなりました。私はメッセージで「足痛いし眠い。でもここまで来たら絶対ゴールするよ」そうして自分を奮い立たせたのでした。言霊です。

県道101号線を西にひた進み、ようやく見えた最終エイドは三国浦交差点の信号を渡った先のローソン脇。エイドでの補給食はカップ春雨とクロワッサン1個。エイドには私一人。ゴール間近のため、靴も脱がず、ストレッチもほどほどにリスタートしました。

第六エイド~ゴール(あわら湯のまち広場、115km地点)
12kmの短い最終区間、所要時間は2時間20分くらい。時速は5.2kmくらいでラップタイムは11分30秒くらいです。この区間は前後方ほかの参加者とは遭わず完全に一人旅でした。ラストスパートがあったので実際のペースはもっと早いのですが、なんといってもこの区間は日本きっての景勝地、東尋坊があります。内心焦りながらも楽しむことを最優先に考えました。
残り少しなので気持ちも焦り第六エイドでは小休止にとどめました。補給をいただき軽いマッサージ程度でリスタート。ごみを捨てつつ、スタッフの方に向けて元気よく「行ってきます!」。最後のエイドだからというのもありますし、もちろん自分にも向けた一声、気合を入れました。
しかし身体がガッチガチに固まってしまってリスタートがつらい。動かそうとしても骨や筋肉同士が全然連動しない感覚。骨の髄にも歩く振動が響きます。かっこ悪い歩き方してるんだろうなあなんて思いつつ。そして覚悟はしていましたが、東尋坊付近はしっかりとした坂道が多くなります。それでも完全に日が昇り暖かくなってきたので身体がなじむのが早いですね。ゴールが近いこともあって気持ちも前向きです。

いよいよ東尋坊に到着しました。タイムや後続のことを考えるとスルーっと通り抜けたい気持ちもありますが、私にとっての思い出の地でそんな選択肢はありません。

東尋坊の飲食店やお土産屋通りを抜けて見えました、思い出の地!これが世界でも有数の美しい柱状節理です。たぶんもうちょっと下まで降りた方がより美しい写真が撮れたのでしょうが、残念ながらそこまで頭と体力は回らず。より美しい写真は写真のプロに任せます。

東尋坊を散策していると恐竜がいましたので、雄島をバックにツーショット!自撮りなので反転していますね。風も強いですし、落ちていかないよう母親に掴まれていたのを思い出します。

ウォーキングとこの地をもっと堪能したい気持ちとの葛藤の末、観光はほどほどに、上着をリュックにしまい昼用にモデルチェンジしました。何度でも言いますがリスタートがつらいです。疲れた身体に響く…特に下り坂が…
残り数kmになりようやく具体的なフィニッシュタイムが見えてきました。ちょうど24時間くらいかな?24時間ぴったりでゴールしたら面白いかな?なんてしょうもないことを考えたりもしましたが、結局完全回復に向けて24時間を切ることに狙いを定めました。

冷静に見ると何気ない田舎の風景なんですが、こういう時に見た景色って色褪せないですよね。最終版の苦しみもがくときに見た景色一枚一枚は田舎っぽいとかキレイとかそういった表層的な形容表現を超越します。それらは見た人の意志や思い出がのった宝物。自分で歩いてきた人にしか見られない景色。だからこそ私はその一枚を大切にするし、その一瞬の感動の共有こそがこのブログの存在意義なのかなと書いていて思いました。疾走感や感動が少しでも伝わると嬉しいです。
さて丘を下り国道305号線に合流するやいなや、田園地帯の中に芦原温泉街が見えてきました!

ラスト2kmくらいは身体への憂慮を振り払ってスパートをかけました。もうすぐ10時だ!24時間を切れるかもしれない!(午前10時までにゴールすれば24時間切りと思っている)
ほどなくしてあわら市にも入りました!

ラストスパート!走り出したい気持ちをぐっとこらえて早歩きで芦原温泉の中心部へ飛び込みます。garminのデータは消えましたが、最後のラップタイムははっきりと覚えています。100km以上歩いてきてラスト1kmは9分30秒。
そして、、、見えてきました!

見事、ゴール!

いままでの大会で大して祝福してもらったことはなかったので、自分で動画を回しながら入っていったのですが、過去一の手厚い祝福を受けてテンパりました(笑)温かく出迎えていただいたスタッフの方には感謝です。ゴールしたら泣いちゃうかななんてことも思っていましたが、そんなことはまったくなく、頭からっぽでその瞬間を楽しむのでした。
そしてフィニッシュ時刻は午前10時ちょっと過ぎ、ぎりぎり間に合いませんでした~なんて話をゴール地点のスタッフさんにしたところ、スタッフさんから一言。昨日スタートしたのは午前10時半ですよ…?
最後に、リザルトとして大会内の順位は出ますが、この手のウォーキング大会は順位を競うものではないと思っているため「レース」という言葉を使うのは極力控えるようにしています。しかしながらある程度前のほうにいると、前方や後続はとの差はどうしても気になるものです。交流しつつも抜きつ抜かれつしているんですもの。友達でありライバル、これは私個人の考え方。
さあ次回はゴール後のチョイ話。遠征しているので重い体を引きずって帰らねばなりません。実は歩く以上につらいんだな、これが。
今回も読んでくれてありがとうございました。
よーく
今回紹介したルートマップはCHYLIMさん公式HPよりお借りしました。
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